児童相談所のおと

児童相談所で勤務しています。児童相談所から聴こえる音。児童相談所で綴られるノート。そういったものを書いていきたいと思います。

虚言癖という、慎重に使うべき言葉

児相に関わるこの中には、子どもが「嘘をつく」ということを問題視するケースがあります。

子どもが嘘をつくので、親が困る、学校が困る、職員が困る。

では、「嘘をよくつく」という行動を、どのように周りが表現するか。

 

例えば、<虚言癖>と言ってしまうことがあるでしょう。

 

意図的に、「そういう子だ」という意味合いを込めて言うこともあれば、短い引継ぎ文書や連絡時間の中で、端的に子どもの特徴を表す方法として<虚言癖>という言葉を使うことがあるかもしれません。

理由はどうあれ、<虚言癖>という言葉を使った瞬間、子ども本人だけの問題になってしまいます。子どもの「癖」が悪いのだ、と。

でも、「なぜこの子は嘘をつくのだろう。本当のことを言わないのだろう。なぜ隠すのだろう。」と いう問いを掘り下げていけば、けして本人だけの問題ではなくなります。

「本当のことを言うと、叩かれるから。蹴られるから。厳しく叱られるから。恥をかかされるから。食事を抜かれるから・・・」

きっと、いろいろな事情が絡み合って、本人の防衛手段として、「本当のことは言わない」という行動に表れていることも多いでしょう。

 

そういった意味では、「虚言癖」という言葉を使うのは、かなり慎重にしなければなりません。

「虚言癖」という言葉を使いたい自分にこそ、実は、「子どもに嘘をつかせてしまう原因」があるのではないか。と、自分を問うてみる必要があります。

 

自分にも原因があると見なすのは苦しいですが、事実を見つめるためには、やらなければいけないのです。