児童相談所のおと

児童相談所で勤務しています。児童相談所から聴こえる音。児童相談所で綴られるノート。そういったものを書いていきたいと思います。

児相は、説得してから連れていく。警察は、連れて行ってから説得する。

非行少年への対応について、警察から面白い話を聞きました。

 

家にいられない、学校にも行かない、ちょっと悪さをするような非行少年への対応について、児童相談所は、まず説得を試みます。

「親と暮らせるようにして家に帰って、ちゃんと学校に通おうよ。家にいられないんだったら、いろいろ心配だから、児童相談所の一時保護所にきなよ。」というように。

それは、本人が納得した上でないと、家に戻ってもうまくいかないし、一時保護所でも荒れてしまうし、「本人の納得」というところをスタート基点にするからです。

 

でも警察は違うみたいです。

警察は、まず警察署に連れてくる。あるいは、警察車両の中に入ってもらう。そこで説得をする。ということです。

本人が納得する前に連れていくという事は、当然、本人の抵抗が予想されます。

でも警察組織は、対暴力について訓練され、人員体制が敷かれ、法整備もなされているので、多少の抵抗があっても連れていくことが可能です。

そのような「抵抗しても無駄」というイメージも定着しているので、抵抗自体が減る可能性もあります。

 

別に、どちらがいいとか悪いとかは、思っていません。

実務の中では、そのような役割分担も、まあありかな、という感覚です。

 

虐待や非行の現場では、福祉的な関わり、つまり相手の気持ちに寄り添って、信頼関係を築き、エンパワメントしながら、自己実現を図っていくような、そういう手法やスタンスが通じない場面も多々あります。

一刻の猶予も許されないとか、意思疎通が難しいとか、もう強引に場面を展開させないと、どんどん危機が深まっていってしまうのです。

 

 

「児相は、説得してから連れていく。警察は、連れて行ってから説得する。」

そういう役回りのようです。